技術用語集 熱処理 浸炭処理
浸炭処理(Carburizing)は、鋼材の表面に炭素を浸透させて硬化させる熱処理で、摩耗や疲労に強い表面を得ながら、内部の靭性を保つことができるのが最大の特徴です。
表面は摩耗に強く、中身は衝撃に耐える必要がある部品に適しており、自動車部品(ギア、シャフト、ピン)や工作機械部品(スライド、カム)、精密機構部品(ベアリングレース、ロック機構)などに多く用いられています。
浸炭処理の目的
- 表面硬度の向上:摩耗や擦り傷に強くなる
- 疲労強度の改善:繰り返し荷重に耐える部品に有効
- 靭性の保持:内部は柔らかく、衝撃に強い
- コスト効率:高価な高硬度材を使わずに性能を向上できる
浸炭処理の主な処理方法と種類
■固体浸炭
- 処理方法:炭素源の粉末とともに加熱
- 特徴・用途例:古典的。制御が難しいが設備が簡易。研究用途や小ロットに
■液体浸炭
- 処理方法:炭素含有液体に浸漬して加熱
- 特徴・用途例:均一な浸炭が可能。中小部品に適する
■ガス浸炭
- 処理方法:炭素含有ガス(例:メタン)を供給
- 特徴・用途例:制御性が高く、量産に適する。自動車部品などに広く使用
■真空浸炭
- 処理方法:真空下でガス浸炭を行う
- 特徴・用途例:高精度・高品質。航空機部品や高級工具に使用される
浸炭処理条件の一例
- 材質:SCM415など
- 加熱温度:850〜950℃
- 保持時間:数時間〜十数時間(浸炭深さに応じて)
- 冷却方法:焼き入れによる急冷(油冷やガス冷)
- 後処理:焼き戻しで応力除去と靭性調整