技術用語集 表面処理 電気めっき
電気めっきは、電解液中で電気エネルギーを利用して、金属イオンを基材表面に析出させるプロセスです。
多岐にわたる金属(亜鉛、クロム、ニッケル、金、銀など)を適用でき、連続加工が可能なため比較的安価に実施できる利点があります 。
1. 電気亜鉛めっき
電気亜鉛めっきは、鉄製品の防錆目的で広く利用されています。その防錆メカニズムは、単なる皮膜による保護に加えて、亜鉛の「犠牲防食作用」にあります 。これは、めっき層に傷がつき基材の鉄が露出しても、イオン化傾向が鉄よりも高い亜鉛が優先的に溶け出すことで、電気化学的に鉄の腐食を防ぐというユニークな原理に基づいています 。しかし、亜鉛単体では酸化しやすいため、耐食性をさらに向上させるために、後処理としてクロメート処理が不可欠です 。このクロメート処理によって、外観(ユニクロ、有色、黒色)と耐食性の両方を調整することができます 。
2. 硬質クロムめっき
硬質クロムめっきは、ビッカース硬さでHv 900-1050という非常に高い硬度を誇り、優れた耐摩耗性、耐腐食性、耐熱性を持つことで知られています 。その美しい光沢から、装飾目的にも用いられます 。しかし、硬質クロムめっきは「付き回り」が極めて悪く、均一な膜厚を得るためには熟練した治具設計が必要となるなど、加工の難易度が高いという課題があります 。また、めっき中に水素を吸蔵するため、高強度鋼などの脆性リスクがある素材にはベーキング処理と呼ばれる熱処理が必須となります 。さらに、非常に硬い被膜であるため、硬質クロムめっき同士が摺動する環境では「かじり」と呼ばれる急速な摩耗現象が発生する可能性があるため、設計上の注意が必要です 。
3.無電解ニッケルめっき
無電解ニッケルめっきは、外部の電気を使用せず、浴液中の還元剤との化学反応によって皮膜を析出させる技術です 。このため、複雑な形状や内部にも均一な膜厚を形成できるという最大の長所があります 。寸法精度が厳しく求められる精密部品や、電気が通らない非導電性素材への適用も可能であり、耐食性や耐摩耗性の向上、潤滑性の付与にも貢献します 。一方、高価な薬品を使用すること、析出速度が遅いこと、そして液の組成を厳格に管理する必要があることから、電気めっきと比較してコストが高くなる傾向にあります 。