技術用語集 表面処理 化成処理

化成処理は、基材の表面自体を化学反応によって変化させ、新たな保護皮膜を形成する処理です。めっきやアルマイトと比べて皮膜は薄いものの、低コストで生産性が高いという特徴があります 。

1.黒染め処理

鉄や鋼の表面に四三酸化鉄(Fe3O4)の皮膜を形成することで、光沢のある黒色に仕上げる処理です。皮膜の膜厚は1µmから2µm程度と非常に薄く、加工前後で製品の寸法がほとんど変化しないため、寸法精度が重要視される機械部品や精密部品に適しています。耐熱性に優れ(約600℃まで)、摩擦係数を調整することで潤滑性も向上させることができます。ただし、単独での防錆効果は限定的であり、錆の進行を防ぐためには防錆油の塗布が必須となります 。

2.リン酸塩処理

リン酸塩処理は、主に鉄鋼や亜鉛、アルミニウムなどの表面に、不溶性のリン酸塩皮膜を形成する処理です。この皮膜は、それ自体が優れた防錆効果を持つだけでなく、後続の塗装工程における塗料の密着性を飛躍的に向上させる「塗装下地」としての役割を担います。このように、リン酸塩処理は、単体で完結する技術ではなく、他の表面処理の性能を最大限に引き出すための重要な前処理として機能します。

3.クロメート処理

クロメート処理は、亜鉛めっき後の後処理として広く用いられてきた技術です。しかし、EUのRoHS指令やELV指令によって、防錆性に優れた六価クロムが規制物質となったため、代替技術への移行が急速に進められました。現在では、六価クロムを含まない三価クロメート処理が主流となり、耐食性を確保しつつ環境規制に対応することが可能になっています。

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