技術用語集 表面処理 表面窒化処理
1.ガス窒化処理
アンモニアガス(NH3)を約500~550℃に加熱した炉内で、分解された活性窒素(N)を金属表面に浸透させる方法です。
特徴
- 硬化層が厚い: 他の処理法に比べて硬化層を深く形成できるため、高い強度を必要とする部品に適しています。
- 処理時間が長い: 硬化層を深く浸透させるため、数十時間といった長時間の処理が必要です。
- 寸法変化が少ない: 低温で処理するため、焼入れ処理などに比べて熱による歪みや変形を抑えられます。
- 適用材料: SACM645などの窒化専用鋼や、クロム、モリブデン、アルミニウムを含む合金鋼に特に効果的です。
2. 塩浴窒化処理
シアン酸塩を含む約570℃の溶融塩(ソルトバス)に金属部品を浸漬し、窒素と炭素を同時に浸透させる方法です。軟窒化とも呼ばれます。
特徴
- 処理時間が短い: 数時間で処理が完了するため、生産性が高いです。
- 硬化層が薄い: ガス窒化に比べて硬化層は薄いですが、優れた耐疲労性と耐かじり性(焼き付き防止)を発揮します。
- 幅広い材料に適用可能: 炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼など、多くの鉄系材料に対応します。
- 環境負荷: シアン化合物を使用するため、廃液処理など環境対策が必要です。
3.プラズマ窒化処理
真空炉内で窒素ガスと水素ガスの混合ガスをプラズマ化し、イオン化した窒素を金属表面に衝突させて窒化する方法です。
特徴
- 低温処理: 約400~600℃の範囲で処理が可能で、特に低温で処理することで歪みや寸法変化を最小限に抑えられます。
- 部分処理が可能: 窒化させたくない部分に治具などでマスキングすることで、特定の箇所だけを窒化させることができます。
- クリーンな処理: 有害物質を使用しないため、環境負荷が低いです。
- 複雑な形状に不向きな場合も: 細く深い穴や複雑な形状の部品では、プラズマが均一に届かず、窒化ムラが発生することがあります。