技術用語集 熱処理 高温ダブルテンパー
高温ダブルテンパー(高温二回焼戻し)は、焼き入れ後に高温で2回焼き戻しを行う熱処理方法で、特に工具鋼(例:SKD11)や高合金鋼などに用いられます。
目的は、残留オーステナイトの除去と靭性の向上です。
高温ダブルテンパーの定義
- 焼き入れ後、高温(約500~650℃)で2回焼き戻しを行う処理
- 1回目の焼き戻しで残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させ、2回目の焼き戻しでそのマルテンサイトを安定化・靭性向上させる
高温ダブルテンパーの主な目的
- 残留オーステナイトの除去(寸法安定性の向上)
- 応力除去(経年変形やクラック防止)
- 靭性・耐衝撃性の向上
- PVDやCVDなど高温表面処理への対応
適用例とポイント
■SKD11
- 用途:金型・パンチ・刃物
- 高硬度+靭性が必要な場合に有効
■SKH(高速度鋼)
- 用途:切削工具
- 焼き戻し脆性を避けるため急冷が推奨される
■SCM材
- 用途:機械構造部品
- 調質材としても応用されることがある
注意点
- 焼き戻し温度が高すぎると硬度が低下するため、温度管理が重要
- 焼き戻し脆性(特定温度域で靭性が低下する現象)を避けるため、急冷処理が推奨されることもある
- 高温焼き戻し後に表面処理(PVDなど)を行う場合、処理温度との整合性が必要