技術用語集 熱処理 窒化処理
窒化処理(Nitriding) は、金属表面に窒素を浸透させて硬化させる熱処理で、摩耗・疲労・腐食に強い表面を得ることができます。
焼き入れを行わずに高い硬度が得られるため、寸法変化や歪みを抑えつつ、長寿命化や高精度が求められる部品に有効な処理です。
- 処理温度:一般に 500〜600℃(焼き入れ温度より低い)
- 冷却方法:空冷(焼入れ不要)
- 処理時間:数時間〜十数時間(目的の窒化深さによる)
- 対象材質:窒化性元素(Al, Cr, Mo, Vなど)を含む鋼材(例:SCM440、SKD11、SACM645など)
窒化処理の主な効果と用途
- 表面硬度の向上:HV900以上も可能。摩耗・擦り傷に強くなる
- 疲労強度の改善:表面圧縮応力により亀裂の発生を抑制
- 耐腐食性の向上:窒化層が酸化や腐食を防ぐ
- 寸法安定性:焼き入れ不要のため、変形が少ない
- 用途例:金型、シャフト、ギア、スライド部品、精密機構部品など
窒化処理の主な処理方法
■ガス窒化
- 処理方法:アンモニアガス中で加熱
- 特徴:最も一般的。制御性が高く量産向き
■プラズマ窒化
- 処理方法:プラズマ状態の窒素を利用
- 特徴:低温・高精度。変形が少なく精密部品に最適
■液体窒化
- 処理方法:塩浴中で加熱
- 特徴:均一な処理が可能。中小部品に適する
■イオン窒化
- 処理方法:イオン化した窒素を照射
- 特徴:高硬度・高精度。設備は高価だが高性能
窒化層の構造
- 化合物層(白層):Fe₄NやFe₂–₃Nなどの窒化物。非常に硬いが脆い
- 拡散層:窒素が鋼材に拡散した領域。靭性と硬度のバランスが良い
多くの場合、白層の厚さを制御することが重要で、用途によっては除去することもあります。