技術用語集 表面処理 PVD/CVDコーティング

物理蒸着(PVD)と化学蒸着(CVD)は、真空中で高機能な薄膜を形成する乾式めっきの一種です。特にPVDコーティングは、非常に硬く、耐摩耗性、耐腐食性、摺動性の向上に優れた効果を発揮します。

PVDの原理と特徴

PVDは、真空中でターゲット材料を物理的に蒸発させ、プラズマ化されたイオンを基材表面に衝突させて堆積させるプロセスです。真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど複数の手法があり、それぞれに異なる特性があります。CVDと比較して、PVDは低温(200℃〜500℃)での成膜が可能であり、熱に弱い基材へのダメージを抑えられるという利点があります 。また、化学物質を使用しないため、環境負荷が低い点も大きな特徴です 。

PVDは非常に硬い皮膜を形成する一方で、基材が柔らかいと硬度差が大きくなり、密着性が低下して皮膜が剥がれやすくなるという課題があります 。この問題を解決するため、PVD処理の前に窒化処理を施し、基材の表面硬度をあらかじめ高めるという複合プロセスが採用されることがあります 。

DLCコーティング

ダイヤモンドライクカーボン(DLC)は、PVDによって形成される非常に硬い薄膜であり、ダイヤモンドとグラファイトの両方の特性を併せ持ちます 。極めて低い摩擦係数(µ=0.1)を持つため、摺動部品の摩耗や焼き付きを抑制し、潤滑性を高める効果があります 。耐摩耗性、耐食性、そして電気特性の制御も可能ですが、膜が脆く、厚い膜を形成するのが難しいという欠点もあります 。

また、耐熱温度は比較的高くなく、約450℃が目安となります 。

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